ハーブ・薬草
30分って意外と短いなぁ……なんて想っているなんらかです.
今回は魔法世界のハーブ・薬草について書いてみたいと思います.
ハーブとは何か
ハーブの語源はラテン語のherbaに由来し,「野草」を意味していました.
現在では,ハーブは主に料理や飲料の香り付けに使われています.
ハーブの定義は色々ありますが,取り敢えず今回は香辛料や薬草(薬用植物)としての使いみちのある有用植物全般をハーブとして扱うことにします.
ハーブは,主にヨーロッパにおける薬用植物の呼び名であります.
ハーブや薬草は原始時代から人類の歴史に存在し,病気の治療や厄除けなどに用いられてきました.
文明が生まれた後も,各地で薬草園が作られ,その有用性から教会などでも栽培されていたのです.
その後,ハーブは医療や厄除けにとどまらず,保存料や香辛料のしての地位も確立していきます.
さらにはお酒に漬けたり溶かし込んだりすることで,薬酒が作られることもありました.
ヨーロッパにおいては,広い大地の中で食料を遠くまで運び,冬に食物を確保する必要がありました.
すなわち,食物の腐敗を防ぐ保存料としての役割がハーブに求められたのです.
元来,保存料としての役割はスパイスが担っていました.
しかしローマ帝国の崩壊などに伴いヨーロッパが荒れると,胡椒などのスパイスはとたんに高級品となってしまいます.
そこでこれらスパイスに代わるものして,ハーブが用いられたのです.
実際に胡椒代わりのマメグンバイナズナは「貧者の胡椒」と呼ばれたほどです.
ちなみにハーブとスパイスの違いの大体は,使用部位と効果の強度です.
ハーブは葉や茎を使うのに対し,スパイスは実や種子を使います.
もちろん,スパイスの方が香りも強く,少量でも強い効果を持っています.
ファンタジーのハーブ・薬草
ファンタジーでは,良く薬草が登場します.
そして「使う」と,体力が回復します.
ゲーム的な解釈をすれば,薬草を「使う」とHPが回復する,だけで良いのですが……
しかし実際の人物たちは,どのようにして薬草を「使う」のでしょうか?
多くの作品では食べるか煎じて飲むかすることが多いと思います.
設定によっては,包帯として使うと効果があったりもしますね.
こだわりの強い作品なら,成分を抽出して薬などにしないと「使う」ことのできないようになっている場合もあります.
ちなみに私はこれらが全部好きです.
なので私の世界では,薬草は余すところなくこういった使い方をされます.
豊かな国に住む市民が,朝に薬草を使ったハーブティーを飲む.
謎のツボに薬草を入れて薬を生成する.
軽く怪我をした冒険者が,悪態をつきながら薬草を噛む.
腕を切り落とされてしまい,応急処置として薬草を巻いて癒着を促す.
こんなシーンを想像するだけで,なんだかファンタジーな気分がしてきます.
きっとどこかの家では,香草をたっぷり使った料理が食べられていることでしょう.
ハーブや薬草の使い方は,無限大なのであります.
しかしハーブがこれだけ多目的に使われるのであれば,それなりの理由付けが必要です.
現実世界では,ハーブを噛んだだけでは傷が塞がることはありません.
生薬を塗ったらすぐに傷口が消えるわけではないのです.
ゲームではそこを描写することはできない(難しい)ですが,設定として補完することはとても重要です.
剣と魔法のファンタジー世界では,当然ながら薬草にも魔法などの神秘を適用できます.
すなわち,それっぽい理由があればなんだって良いわけです.(暴論)
例えば,薬草を食べることで薬草に宿る生命力を吸収できる.
そうした設定があれば,食べたその場で傷が塞がらなくても「HPが回復する」感はありそうです.
また生命力の高い草は,力が有り余って魔物化してしまったり,ひとりでに走ったりなんかしても良いですよね.
他にも人体を組成する成分を持った薬草があれば,すり潰した葉を傷口に塗り込むことで傷が塞がる,といったシチュエーションに説得力が増します.
聖なる祝福が宿った草なら,食べるだけで神々の癒やしを授かることができるかもしれません.
レイ・ド・エクアトリアル
なんらかです.
今日は現段階でのキャラクターの設定を紹介したいと思います.
今回は主人公の父にしてラスボス(予定)のエクアトリアル卿について紹介します.
レイ・ド・エクアトリアル
「所詮貴様は失敗作だったということだ……息子としてではない。人間として、貴様はなり損なったのだ」
概要
フィーネの父親にして,帝国最大の魔導技術研究機関「エクアルト機関」の局長.
魔導技術の研究開発に関し,その知識・経験において魔法世界に並ぶ者なしとされるほどのプロフェッショナル.
古代の魔法技術に陶酔し,それを現代に蘇らせるために魔導兵器開発に没頭する.
そのため,古代文明に関する知識量においても魔法世界随一である.
現代魔法世界において初めて実用的な浮遊装置を開発し,帝国の軍事力を大幅に引き上げた立役者.
それまでにも箒などで飛行することは可能であったが,魔力が高くないと速度がでない,同時に他の魔術を行使することが困難,など実戦においては数多くの問題点が存在した.
エクアトリアルはそれを魔導機械化することで魔力による個人差をなくし,空中における高度な魔法戦闘を実現した.
その他強力な魔導兵器の数々を開発しており,帝国の軍事力はほとんど彼によって生み出されているといっても過言ではない.
実際,伝統的な(時代遅れな)魔術師戦を好む国々に対し,帝国はこれらの兵器によって恐ろしいまでの戦果を上げている.
プロフィール
本名「レイ・ド・グランシュニルヴァ」
エクアルト機関では局長を「エクアトリアル」と呼ぶ慣習があり,彼の姓にもなっている.
それどころか本人はグランシュニルヴァの姓を捨てたつもりでいるため,エクアトリアルが本姓であると考えている.
主人公の父であるが,関係は非常に希薄.
家族への関心は薄く,主人公が生まれても,自らは顔をあわせにすら一度も行っていない.
主人公側からは何度か声をかけられることはあったが,そのことごとくを無視している.
自身の研究を進めることしか頭になく,他者と取るコミュニケーションの大半は事務的なもの.
例外で,唯一の友としているのが現皇帝ヴァイサ・サイニスターである.
両者とも今の「狭い世界」について大きな不満を持っており,教会が暗躍する世界を破壊し,広大な世界を勝ち取ることを目的としている.
自身の魔力適正は並であり,魔術師としての才能はあるとは言えない.
しかし古代語魔法に関する知識は超一流であり,魔導器によってこれらの秘法を再現し,繰り出すことができる.
これらの魔導器はコストや汎用性の問題から,一般配備を見送られた物がほとんどである.
身体能力は並以下.
移動時には自作の魔導器によって空を飛んでいる.
人の手に収まらない神秘をひどく嫌い,あらゆる神秘は魔導技術の中に収まると主張している.
実際に秘法として認定されていた多くの魔法が,帝国の(彼の)技術によって魔導器に収まっている.
唯一再現することができなかったジールの大剣の能力に対しては,異常なまでの嫌悪感を露わにしている.
そしてその「技術」の価値を理解していないジール本人に対してはさらに嫌っており,戦闘狂や原始人といった言葉で形容している.
セツナに憑依して少女となったユキナに出会った際には,それが息子だと気づくことはなかった.
しかしジールになついているユキナのことは快くおもっておらず,愚かな小娘と断じている.
後に彼女が「虚無の吹雪」そのものだと判明した際は,もの一番にモルモットとして利用しようとした.
古代魔法に触れるようになってからは,教会が提唱する三元魔術の殆どを否定している.
故に彼は魔法世界有数の外法使いでもある.
魔法・魔術の紹介
なんらかです.
今回は魔法・魔術の設定について公開します.
三元魔術
現行魔法世界における魔術大系で,炎,風,水の三属性からなっています.
虚無の吹雪によって旧文明が滅びた後,新興宗教となったアルマ教が提唱して広がりました.
三元魔術は,三属性の魔力を混合することで様々な属性の魔法を生み出す魔術です.
炎は風に強く,風は水に強く,水は炎に強く……
といった,三すくみを基礎に置くことで魔力循環を具体化しています.
こういった魔術大系は魔法文明において典型的で,四元素や五行と似たものと考えて問題ありません.
魔法世界ではこれら三属性に「霊」が宿ると考えられており,他の属性に比べ,特に神聖視されています.
アルマ教が提唱する魔術の目的は「調和」であり,これらの霊はそれを司る魔力の源泉として定義されています.
実際にその信仰から,炎,風,水の精霊も生まれています.
魔法の発動における原理は色の三原色に似ていて,三霊の比率によって属性を作り出します.
木魔法は風と水の混合属性です.
また四大元素とは異なり,土魔法は大量の炎に中程度の風,少量の水によって構築される混合属性の魔法です.
雷魔法は大量の炎に,大量の水と少しの風の霊を混合して生み出されます.
光魔法は炎属性に寄っている魔法で,聖魔法とは異なる属性を有します.
混ぜ込む霊力が等分になると聖魔法か無属性魔法,闇魔法になります.
三霊を調和させ,三すくみの順方向に魔力を循環させると聖魔法に
霊を自由に純粋に魔力を放出すると無属性に
調和を見出し,三すくみの循環を破壊すると闇魔法に
氷魔法
現行魔法世界における例外として,氷魔法は三元魔術に含まれません.
氷は非生命的な属性であり,数ある属性の中で一つだけ「零」に向かおうとする特殊な性質を持っています.
風魔法は魔力でエネルギーを生み出して風を起こします.
水魔法は魔力を原初物質化させて水を生み出し,操ります.
炎魔法は特にシンプルで,魔力をエネルギーにして燃やします.
これら三元魔術は全て「正」の向きに魔力を使用するという特徴があります.
そして混合属性の魔法も同様に,闇魔法も含めて全ての魔法において魔力が「正」の向きに使用されます.
しかし氷魔法は魔力によって熱そのものを奪い去る特性を持っているため,魔力が「負」の方向に使われます.
(実際には「負」ではなく「零」に向かうため,氷魔法は「静止」の性質を強く持っています)
この特性があるため,三元魔術の理論では氷魔法を再現することができません.
そのため現行魔法世界においては,セツナ(ユキナ)を除いて氷魔法を使う人物は存在しません.
これは虚無の吹雪により世界から雪や氷の概念が奪われた影響によるところも大きく,魔法世界人の全員が氷が何なのかを全く知りません.(クリスタルなどの結晶は知っていますが,水分子の結晶は知らないのです)
雨の原理の説明には本来氷の存在が書かせませんが,魔法世界においては水の精霊によって雲や雨が生まれると考えられています.
そして実際にその信仰が元になって雲や雨が作り出されるため,雲の中に氷は発生しません.
魔法世界においては,現実世界とは雨が降るメカニズムが異なっているのです.
外法
アルマ教の管理外にある魔法,すなわち三元魔術に含まれない魔法は全て外法扱いされます.
外法は基本的に教会の監視対象となっています.
氷魔法も外法の一つです.
他にも空間転移や時間操作などの時空系の魔法は,基本的に全て外法に該当します.
また古代語魔法も外法です.
特に古代語魔法は教会が優先して管理・秘匿している外法です.
これは古代語魔法が人の手で生み出された三元魔術以外の「魔術」であるため,教会が提唱した三元魔術の神秘性を損ないかねないからです.
一部の王家などに伝わる専用の魔法も外法の一部です.
これらの外法は教会によって認められることで,統治者の権威を示す魔術的なレガリアともなっています.
こういった外法は,秘法や奇跡と呼ばれて神聖視されています.
またジールの持つ大剣が持つ「魔力を打ち消す能力」も外法によってもたらされた物であると考えられています.
実際には「神格を否定する神器」という驚異的な性質の副産物なのですが.
ともあれジールの大剣は外法認定されているため,教会から非常に白い目を向けられています.
ジールが普通に生活できているのは,教会の支配が弱い帝国にいたから,という理由もあります.
異世界の文明
なんらかです.
唐突ですが,異世界の文明とはどのようにして出来上がるのでしょうか?
多くの人が世界史で習ったであろう,メソポタミア文明だとかインダス文明だとか黄河文明だとか……
今の文明はそういったものが起源にあると言われていますね.
これらの文明は全て,河川を生活圏の基礎においています.
人は水とともに生きてきたのです.
ではファンタジー世界の人々は,遠い昔においてどのように文明を築いたのでしょう.
ファンタジー世界では,「高度に発達した古代文明」というものが登場することがあります.
私の世界でもそういった古代文明が登場します.
そういった世界では,比較的文明の成り立ちを考えるのが容易です.
ロストテクノロジーやオーパーツを紐解けば,過去の人々が残した知識が得られますし,遺跡などの構造物が建築の際に大きなヒントを与えることでしょう.
しかしこういった世界であっても,古代文明を遡れば必ずどこかに最初の文明が存在しているはずです.
そうした文明ができるまでにどのような過程があったのかを考えることは,その世界の「今」を描く上で欠かせません.
話を戻します.
地球上の文明の多く(または全て)は,河川を中心に誕生しています.
理由は簡単で,文明を築くためには水が必要だったからです.
ただの飲む以外にも,耕作を行うためにも水は必要です.
河川は作物を育てるために必要なだけでなく,ときに洪水を起こして土壌を改善したりもします.
水があっても,痩せた土地では作物は育ちません.
大規模農耕の誕生は,すなわち文明の誕生を意味します.
食べるために狩猟や小規模な農耕だけをしていては,建築業や製造業に時間を当てられません.
大規模農耕が十二分な食糧供給を保証することで,初めて人は文明を手にすることができるのです.
ちなみにメソポタミア文明などの古代文明の発祥の地を「文明のゆりかご」といいます.
逆説的に言えば,ゆりかごが用意されていない文明は,持続可能な文明とならずに淘汰されたということです.
文明が誕生するためには,河川が重要なファクターとなっているのです.
では魔法などの神秘が存在する世界においても,文明を産み出すために人は河川を必要とするのでしょうか?
私の答えは,半分YESで,半分NOです.
魔法や魔術などの超常現象は,文字通り「常」を覆すだけの意味を持っています.
すなわち,祈りは環境を克服しうるということです.
神話などでは,神々の奇跡によって山や海,川が生まれたりします.
神官や巫女が日照りを止め,暴風雨を鎮めることもあるでしょう.
作物の育たない土地ではそれを悪魔の仕業と断じ,生贄を差し出すことも考えられます.
こういった神話や寓話は,ファンタジーおいて現実のものとなります.
不毛の大地は,人々の嘆きと祈りで豊かな環境へと変貌する可能性が十分にあるのです.
河川のない環境でも,超常現象の元において人は文明を手にすることができます.
では河川が必ずしも必要ではないかというと,そうでもありません.
超常現象が存在する世界においても,人は常に「常」の中で生きています.
「常」と言うものはとても強制力の高いものです.
鳥は空を飛べても,人は空を飛べません.
物体は上から下に落ちますし,川は高いところから低いところへ流れます.
そのファンタジー世界が私達の世界を元に描かれる限り,この「常」は超常現象でしか破ることはできません.
河川を持つ人々は,超常現象にすがるしか文明を築く術のない人々と比べ,圧倒的なアドバンテージを持っているのです.
なにせ超常現象に頼る必要がないので,そこに祈るエネルギーを割かなくて良いのですから.
雨を降らせることに必死な人々には,日照りを起こす方法を生み出そうとは思いません.
木のない地域に住む人々は,森を焼く方法を考えたりはしません.
一方で,水もあれば森もある地域の人々は,天候を自由に操る術や資源をより多く生み出す術を欲することでしょう.
その時,人々はただの生存欲求から外れた「欲望」を手にします.
祈りの対象が「すべきこと」から「したいこと」に変わるのです.
これは大きなポイントで,河川を持つ文明は他の文明と比べて非常に強い貪欲性を内包します.
「生存」や「繁栄」だけでなく「挑戦」や「競争」,「探求」や「学問」など,より多くの目的が文明に生まれるのです.
こうした文明の方が,過酷な環境にある文明よりも強いのは明白です.
ファンタジー世界で主に「人」の文明として描かれるものは,このようにして生まれたのだと考えられます.
他種族が登場するファンタジーにおいても,「人間種は欲深い」という扱いがなされやすいのは,このような理由があるためだと私は思っています.
逆に,エルフやオークに代表される亜人種は,過酷な環境で文明を築いた人々が進化したものだと考えると非常に納得が行きます.
なにせ「亜人」と呼ばれるくらいですから,人が元になっているのは自明です.意図して作られたミスリードでなければ.
ここで注目するべきなのは,そこにいた「人」の進化は,ファンタジー世界においては必ずしも生物的でなくても良いという点です.
すなわち,魔法・魔術的な進化を遂げてもおかしくありません.
超常現象によって進化したのであれば,その種は他の種にとっての「超常」を纏います.
これらの種族は他者にとっての「超常」を自分にとっての「常」とすることで,自身を超常たらしめます.
エルフやオークはこのように進化したといって良いでしょう.
肉体的な老いという「常」をとどめる「超常」の寿命や,種族や遺伝子といった「常」を無視して生殖を行える「超常」の生命力.
また,妖精種は魔法・魔術的に進化した典型例といえます.
「小さな体に虫に似た羽を持ち,死んでも魔力で生き返る」
「花や植物などから生まれる」
「魔力が高く,魔法が得意」
「女王種がいる」
これらの設定は作品によって異なりますが,いずれも「超常」的な能力です.
妖精が生まれるまでに,その文明ではもしかしたら「虫のように生きる」ことが日常だったのかもしれません.
またこれら亜人種は文明を築けるだけの知能を持っているのですから,文明同士の交流が起きてもおかしくありません.
それが共存であっても,闘争であっても,です.
「エルフは交流を好まず,長寿」
「オークは野蛮で知能が低く,共存よりも一方通行の依存か闘争を選ぶ」
「フェアリーは比較的友好だが,恥ずかしがり屋」
などがありますね.
典型的なパターン以外にも様々な文明の交流がなされていることでしょう.
今回はこれで終わります.
ファンタジーとリアリズム
最近では容赦なく,ファンタジーにリアリズムが介入してきます.
特に「ジャガイモ・トマト問題」など,文明形成に大きく関与する設定への議論は後を立ちません.
現代では,リアルなファンタジー世界が求められているのです.
ですがリアルなファンタジー世界とは一体何なのでしょうか?
その一つの答えとして,「現実世界の歴史の模倣」が挙げられます.
今私達が暮らしている街,住んでいる国,立っている大地,地球,そして宇宙.
これらは紛れもなく今そこに在るものです.
これらの「今」が作られるのにあたっては,途方もつかない歴史が存在していたことは明白です.
ビックバンが起きて,塵が集まって,恒星ができて,海ができて,生物ができて……
……そして人が生まれて,文明ができて,戦争が起きて,併合・分離を繰り返して……
そうやって「今」が生まれた,というのが現代で語られている歴史です.
人の手で語られる歴史というのは,その真偽の一切が不明です.
ビックバンが起きたというのは,あくまで宇宙開闢を説明するための論でしかありません.
新大陸を発見したのは,本当はコロンブスではなかったのかもしれません.
もしかしたらじゃがいもは,中世以前にヨーロッパ諸国に存在していたのかもしれません.
一部も違わない正確な歴史は,人の身で表現しきれるような代物ではありません.
無限の情報を有限である人が表現することは不可能だからです.(少なくとも現代の理論では)
だから,語られている歴史には,主観において自由に「もしかしたら論」を展開することができます.
しかしこんな「もしかしたら論」には特に意味はありません.
歴史を創作に結びつける上で重要なのは,「今」ある世界には確実に「過去」が存在しているという点です.
無限の情報をもった「今」が存在しているということは,無限の情報をもった「過去」が存在しているということに他なりません.
この無限の情報をもつ真実の歴史は「アカシック・レコード」と呼ばれていて,語り手に左右されず,そこに記されている情報は全て不変です.
この「過去」の存在こそが,今ファンタジーに求められている「リアル」なのではないかと思います.
すなわち,その異世界の「過去」を歴史として如実に表現できていれば,そのファンタジーはとてもリアルに感じることができます.
要は説得力の問題なのです.
「食糧難に貧していた国が,(そこらへんに生えていたかもわからない)じゃがいもを食べて強国になった」
「食糧難に貧していた国が,別の大陸からもたらされたじゃがいもを食べて穀物としての価値を知り,その知識を独占することで他国よりも強大な国になった」
後者の方が明らかに説得力が上です
歴史をきちんと描けていれば,それが正しかろうが間違っていようが説得力が増すのです.
ですがこれが地球史以外を舞台にした異世界になるとそう簡単には行きません.
実際に新しい異世界を作り出そうとすると,すべての事象に理由を設け,歴史を一から想像することは不可能のように思います.
……今日はこのあたりで終わります.
今度また掘り下げます.
魔法とテーブルマナー
あけましておめでとうございます.
なんらかです.
今回は,異世界の食文化について書いていきます.
異世界食文化では,やはり「ジャガイモ・トマト問題」がポピュラーですね.
あとは「小麦畑問題」などもあります.
いわゆる「ファンタジー警察シリーズ」ですね(笑)
しかし地球の現代史を元にした世界でなければ,こういった問題はあまり深く考える必要はありません.
そもそも世界や大陸のおこりからしてすでに違うので.食物も地球とはまったく違うものなって然るべきです.
でもそれでは地球に住んでいる我々では理解できなくなってしまうので,わかりやすくするために「小麦っぽい何か」を「小麦」と呼んだり,「じゃがいもっぽい何か」を「じゃがいも」と呼んだりするわけです.
ですが今日はこういった趣旨ではなく,「テーブルマナーと魔法の関係」について書いていきたいと思います.
「カチカチなステーキを風魔法で切って食べる」
「炎魔法を使い,食べる直前に目の前で肉を炙る」
「樽からワインを一口,水魔法で浮かせて取ってきて飲む」
とてもファンタジーな食事描写ですね.
切断魔法があれば,ナイフなんて要りません.
料理を魔法で口に運ばせることができれば,フォークなんて要りません.
魔法で流体を操ることが可能なら,スプーンも要りません.
流石にお皿などの容器は必要だと思いますが(笑)
このように魔法が生活レベルに浸透している文明においては,食事をしている最中にも魔法が登場することは十分に考えられます.
しかしファンタジー小説などの創作物では,食事中に魔法を使うシーンはあまりにも少ないようにも思えます.
もちろん,テーブル上で魔法を使うシーンがこの世に一つもないわけではありません.
有名なところですと,某星間戦争映画では主役の人がフォースを使って果物を持ち上げるシーンがあります.(私はあのシーンが大好きです)
しかし多くの架空小説では,やはり食事中に魔法を使うことはありません.
物を浮かせる魔法などがあっても,誰も食事中には使用しません.
これには表現の難しさや「リアルさの演出」など,創作上におけるいくつかの理由があると考えます.
そもそも読者・視聴者にとってはテーブル上で魔法を使うことは「マナー違反」な行為に映ることが多いと思います.
これは現代文明に「魔法を使うテーブルマナー」が存在していないので当然です.
商業用の創作物では当然ウケを狙う必要があるので,こういったテーブルマナーについては,わざわざ描写する必要性が薄いのです.
しかしこういった議論は作品をアウトプットする際にすれば良いので,このブログではしません.
それよりもその世界でのテーブルマナーの成り立ちや背景について考えるほうが,よほど「リアルなファンタジー」の構築に有意義ですよね.
こういった前提で,改めて「なぜファンタジー小説では魔法を使ったテーブルマナーが少ないのか」について書いていきたいと思います.
言い換えれば「テーブル上では魔法を使うことがタブー」とされている文明が,なぜ多いのかということです.
理由として最もわかりやすく,かつ説得力が強い論として,「宗教の影響」が一番最初に考えられます.
なぜならば,99%のファンタジー世界では宗教が必ず存在するからです.
そして99%,宗教は文明に多大な影響を及ぼします.
魔法などの神秘については,特に教会などの組織によって監視・管理,秘匿されることが多いですよね.
というよりも,魔法や神秘に関する権威を保つことが教会の主目的という世界観がは非常にポピュラーです.
こういった世界観では,テーブル上での魔法の使用を禁止することが非常に容易です.
「食事中に魔法を使ってしますと,魔法の神秘性を損なう」「食事中に魔法を使うことは背信行為である」といった考えが「教え」によって常識となっていれば,誰も食事中に魔法を使わなくなります.
そもそもとして,宗教の「教え」はその宗教のおこりの歴史によって決まります.
後述する他の理由は,総じて「現実的な面で魔法を使うことができない・好ましくない」という例です.
こういた理由が元になって宗教の「教え」に組み込まれた,というのは非常に普遍的であり,かつ歴史的でもあります.
第二の理由として,そもそも食事中に魔法を使うことができないということが考えられます.
魔法などの神秘が「呪術」などの非生活的な方面に偏っている世界観では,こういった描写はできません.
魔法=兵器となっている世界でも,もちろん無理ですよね.
低出力で多目的な魔法が存在しない世界においては,食事で魔法を使うことはほぼ不可能です.
ステーキを切ったつもりで,皿が真っ二つになったら元も子もありません.
肉を炙るたびに火事が起きたら,店がいくつあっても足りません.
第三の理由として,食事で魔法を使うよりも食器を使った方が便利だから,ということも考えられます.
魔法の使用に際し,毎回長々と詠唱するような世界観ではとても食事中に魔法を使うことはできません.
簡易魔法でも発音の必要がある世界では,魔法で料理を口に運ぶことは大変ですよね.
ステーキや果実の切断には魔法を使えるかもしれませんが……
なお,食事のたびに杖を取り出す必要があるということは,食事中に魔法を使わない理由にはなりません.
杖がナイフ,フォーク,スプーンの役割を果たせるのであれば,これらの食器は文明に登場することはない(もしくは淘汰される)からです.
最後の理由として,魔法は武器になり得るという点です.
無論,ナイフやフォークでも人は殺せます.
ですが魔法の方がリーチが明らかに上ですよね.
達人級の投擲テクニックがあれば,テーブルの向かいにいる人間を殺めることも可能でしょう.
しかし魔法の方が殺しのバリエーションが豊富です.
ステーキを切るフリをして首が切られたら,堪ったものではありません.
こうした暗殺や謀殺を防ぐため,魔法禁止のテーブルマナーが慣習として定着したという論は,非常に論理的かつ納得の行くものだと言えます.
この世界観であれば,杖を食事中に持ち出すことなどもちろん許されません.
現実世界に当てはめれば,食事中に拳銃を取り出すようなものですから.
私自身としては,第四の理由「魔法は武器となりえるから」が最も説得力があると思います.
こうした慣習が宗教の「教え」に汲まれ,「食事中に魔法を使うことはタブー」という常識が生まれたのであれば,「禁忌を犯してでも食事中に魔法を使う確信犯」や「宗教の外にある人物」以外は食事中に魔法を使うことはありません.
大体のファンタジー小説の世界観では,これが「魔法を使った食事シーンの少なさ」に繋がっていると言えます.
私自身,食事中に魔法を使うような描写が本当に大好きです.
しかしこういった描写は,血なまぐさいファンタジーと常に隣り合わせなのであります.
その点では,アメリカの銃社会と少し似ているのかもしれませんね.
しかし「冒険者」などの職業が一般的であるような半未開時代においては,食事中に魔法を使うことは珍しくないのかもしれません.
杖を持つメリットとデメリットは,常に等価とは限りません.
街道を歩く際,魔物を襲撃を退けるために魔法が必要な世界なら?
街の入口で門番などに杖を取り上げられることはほとんどないでしょう.
文明社会で生きていくために魔法が必要なら?
きっと魔法犯罪を防止したり取り締まるような社会機構が生まれていることでしょう.
「カチカチなステーキを風魔法で切って食べる」
「炎魔法を使い,食べる直前に目の前で肉を炙る」
「樽からワインを一口,水魔法で浮かせて取ってきて飲む」
ファンタジーらしい仕草の中には,そのファンタジー社会の葛藤が詰まっているのです.
今日はここあたりで終わります.
テーブルマナー以外にも,魔法がある世界での調理方法も面白い話題ですよね.
こちらについても今後書けていけたらなぁと思います.
杖について
なんらかです.
今回は杖について書いていきたいと思います.
現実世界において,杖は身体を支えるために用いられることが多いです.
しかしファンタジーにおいては,杖は様々な場面で魔術的意味合いを持ちます.
冒険者たちの一般的な魔法発動媒体から,国宝級の魔術兵器まで,杖という棒状の物質は魔法の象徴として扱われることになります.
暖炉に火を点ける際にも,民衆の多くが杖を使って炎を生み出すでしょう.
杖は身体を支える以外にも,細長くて丈夫な棒状の武器として扱うこともできますが,やはり一番の特徴は権威の象徴になるという点です.
特に王笏は,王冠,宝珠と並ぶ典型的なレガリアの一つになります.
これらのレガリアは国を治める君主の証になりますから,建国からの歴史や民衆の信仰を吸い上げ,かなりの魔術的な格を宿すことになります.
王笏にかぎらず,杖は裁判官や司令官,神官など,ありとあらゆる場面で権威の象徴として扱われています.
魔術文明における象徴としての杖が持つ力は,単なる象徴の域にはとどまりません.
民衆が日常的に使用する杖とは一線を画す「格」がなければ,権杖はその権威を示すことができないからです.
魔法大国の王笏や教皇の司教杖は,特に支配的な力を持っていることでしょう.
逆に魔術信仰の薄い国では杖がレガリアにならないこともあります.
そういった国では対比として盾や剣が象徴となることでしょう.(私の世界における帝国もそういった国の一つです)
一方て日常的に用いられる実用的な杖も,魔法世界においてはたくさんの種類が存在します.
簡易的な魔術に用いられるタクト
魔法戦闘における補助的な役割をもつケインやワンド
片手持ち主兵装としての意味合いが強いステッキ
高い出力を持つ長杖として,ロッドやスタッフ
サイズや用途で明確に分類分けされるぐらいには,魔法文明における杖の重要度が大きいということですね.
また物理攻撃用の護身具として杖が使われることもあります.
人数の少ないパーティにおいては,専任魔術師にも杖術・棒術の心得が必要となるでしょう.
修行僧や修験者が持つ杖として,錫杖というものもあります.
杖の先端に6または12個の小さな輪が通してある杖で,杖の頭部を輪形(りんけい),小さな輪を遊環(ゆかん)と呼びます.
仏教ライクなファンタジーでなければあまり扱われることの少ない印象がある錫杖ですが,私は結構好きです.
むしろ西洋風ファンタジーの世界であっても,杖が生活の身近にあるのであれば,バリエーションの一つとして登場してもおかしくないと言えるでしょう.
実際に私の世界では魔術用の錫杖を「術錫」と呼び,マジックロッドの一種として扱っています.(主人公の主兵装です)
今日はここあたりで終わります.
年末年始は忙しくなるので,気が向いたら更新します.