さくらちっぷ

駆け出し同人サークルのブログです

異世界の筋肉

最近,筋トレを始めたなんらかです. 毎日筋肉痛で悲鳴を上げています.特に上腕二頭筋と太ももの哭き声はなかなかすごいものです.

さて,私たち現代人の多くは主に健康を目指して筋肉を求めているのですが,剣を持ち馬にまたがって戦っていた時代では当然,別の目的で筋トレをしていたわけであります. 例えばオリンピック種目には槍投げなんていうものがありますが,こうした種目は古代オリンピックの時代から脈々と受け継がれてきています. 昔の人々は,戦争をするために筋肉をつけていたのです. ギリシャ彫刻とかのムキムキマッチョな人々を見れば,それはまさに一目瞭然なのであります.

リアルの筋肉

現実世界において,筋肉は実用的な価値を多く持っています. まず第一に,身体能力の向上に大きな貢献をします. 映画やアニメでは,たびたび登場人物たちが馬に飛び乗るシーンが流れますが,これは筋肉がなければ出来ません. ヒョロヒョロな人物が戦闘機に乗ったら,秒で意識が飛んで墜落するでしょう. 筋肉はまさに身体能力の指標であるわけです.

次に,筋肉は健康を呼び寄せます. NASAGoogleといった世界的な企業では,社員の包括的な健康が社運を呼び寄せるとしていますが,まさにそのとおりなのであります. 筋肉量は代謝と密接に影響していますから,筋肉は健康そのものなのです. それにムキムキな人の方が,手術後の回復が早かったりもします. また細部の体温も上昇するため,風邪への抵抗力も高まります.

他にも,筋肉というのは一種のオーラになりえます. ガリガリな人よりもムキムキな人の方が強そうだと,ホモ・サピエンス的には感じてしまうのです. 例えば現代のビジネスシーンにおいて,交渉力とは筋力です.クレーム処理にマッチョが出向くのは,当然の認識なのです.

このように,まさに筋肉とは現代における魔法なのであります. すなわち筋トレをし始めた私は,まさに見習い魔術師といえるでしょう. しかしファンタジーでは本物の魔法が登場してしまうわけであります…………

ファンタジーの筋肉

前置きが長くなりましたが,ファンタジー世界における筋肉の価値はどのようになるのかを,これから考察していきたいと思います.

ここでは人を題材とする以上,異世界人もホモ・サピエンスと同様に筋肉を持っていると考えます. またトレーニングをすることで筋肉をつけることが可能であると仮定します.

その世界に魔力的なものがあり,魔力トレーニング的なものがあるのであれば,まさに筋肉と同じでみんなが魔力トレーニングを実施することでしょう. まさに魔法なわけですから,魔トレをせずに筋トレを優先する人間はそうそういないはずです. では筋肉の価値が0かというと,それはまた違うと考えます. 異世界人も人なので,基本的には心蔵から血液を送り出して生命活動を維持しているのだと考えられます. 心蔵が筋肉で動いているのであれば,生きる上で筋肉は必要です. もしも魔力的なもので生命活動を維持しているのであれば話は別ですが,大半の異世界人は筋肉で生きていると考えるのがスジでしょう.

魔力的なもので体力をブーストできる場合はどうでしょうか. 多くの創作物にありがちな,儚げな少女をブンドドさせる演出であります.(私の創作でも幼女をブンドドさせています) これであれば,筋肉=魔力と捉えても良いような気がしてきます. 応用で心肺機能を魔力で補助,なんていうことも可能でしょう.

しかし筋肉の価値は0にはならないと私は考えます. なぜならその場合,筋力が魔力の下駄となるからです. 100の筋力に100の魔力をプラスするよりも,200の筋力に100の魔力をプラスする方が強そうなのは明らかです.

また魔力の資質には個人差がある(とする創作物が多い)のも,筋肉の価値を保つ要因となります. 神官や魔法使いの適正が低い冒険者は,自ずと筋肉を育てることでしょう. 個人ごとに魔トレの限界があるのでれば,筋トレを取り入れる人間が出てきても不思議ではありません.

魔力による体力ブーストが身体に強い負荷を与える可能性も否定できません. そうした設定がある場合は,一定量の筋肉がなければその魔法を使えない,といったこともありえるでしょう.

ただ,筋肉がマイナス面に働く可能性も考えなくてはなりません. 以前ファンタジーの航空機について適当な文を書いていましたが,体重が軽い方が箒などに乗る面で有利なことは確かです. 体重は軽い方が少ない力で浮くことができますし,加速も容易です.

むしろ魔力適正が低い人間は体重を減らす傾向にある,という可能性も否定できないでしょう. 馬力が小さいから重量を軽くする,まさに軽自動車と同じ理論です.

ただしこの場合は,体重調整のためにトレーニングをしているという可能性も大いにあります. また戦闘機と同様,航空機で超加速した場合には筋肉がないと死にます. 魔力による保護がどの程度まで効くのかは設定しだいですが,空中での魔導戦では最低限の筋肉が必要となるかもしれません.

またこれらとは別に,副次的に筋肉がつく場合があります. 剣の素振りや乗馬の練習をしていれば,自ずと筋肉がついてしまいます. そのため剣士や騎士が筋骨隆々に描写されるのは自然と言えるでしょう. 魔法が飛び交う世界で,果たして剣士が生き残れるのかどうかは別ですが.

加えて重要なポイントとなるのが,魔力で筋力を代替できても,それが最適なのかという点です. 剣を腕力で振るのと魔力で振るのとでは,結果は同じでも過程が異なるわけであります. 魔力で剣を振り回すために10秒ほど準備がいるのであれば,誰もそんな魔法は使いません. 逆に腕を使わずに一切のタイムラグもなく剣を振れるのであれば,誰も剣を手で扱おうとは思わないでしょう.

例のように,魔力が筋力より強力なものであったとしても,使い道が大きくことなる可能性は十分にあります. 魔力が有限である場合は使い所も重要なので,やはり冒険者は最低限の体力=筋力が必要といえるのではないでしょうか.

また,筋肉の価値が現実世界よりも高くなるケースもあります. それは魔法や奇跡に大きな制約が課されている場合です. 典型例は,先程述べたように魔力が有限である場合,例えば魔法の使用回数に(1日に2,3回などの)制約があるケースです.

その世界では軌跡や魔法が認められているため,当然オーガや竜種,吸血鬼といった上位の魔物も当然存在します. しかし奇跡の汎用性が低いため,人間は大部分を奇跡に頼らずに,これらの驚異を退ける必要性があります.

巨人族や吸血鬼,竜人族,ハイ・エルフ……上位種の身体能力は人間のそれを遥かに凌駕します. この場合,体格や身体能力はこれら上位種と渡りあうために必要不可欠なステータスとなりえるわけです.

身体能力とは,当然筋肉です. 人同士の戦が主とされる中世よりも,こうした世界の方が筋肉の価値は高いといえるでしょう.

ファンタジーマッチョの実在性

さて,ここまで筋肉の価値が云々カンヌンと話して来ましたが,上記を踏まえ,筋トレはファンタジー世界でもされている可能性が高いと私は考えます それでも筋肉の価値は現実世界と比べて下回ると思いますが.

散逸する魔力が本物のオーラとなって見えるなら,筋肉オーラなんて屁でもないのです. ベンチプレスで200kg持ち上げることができても,魔法で1tの重量物を持ち上げられるのならば,やはり筋肉の価値はその程度のものなのです.

損か得かで言えば,大体の場合において筋力はあった方が得ですが,トレーニングの優先度としては確実に現実世界よりも低くなるはずです. 剣と魔法のファンタジーに筋肉モリモリのマッチョを登場させるのであれば,工夫が必要でしょう.

最も簡単な理由付けは,やはり宗教上の理由です. 魔力は健全な身体に宿る,とでもしておけば,優秀な魔法使いはみんなムキムキマッチョです. 多様な教えがある世界なら,身体能力の強化に特化した軌跡を持つ地母神の信徒はムキムキの傾向にある,というのもアリな気がします.

単純に探索用具の重量が大きいため,必然的に冒険者はマッシブになる,というのも良いでしょう. 魔力が疎な地域出身の人間は魔法があまり使えないかわりに筋肉が身につく,というケースも考えられます.

剣と魔法のファンタジーでは,魔術師や神官と並んで筋肉モリモリの戦士や武道家がいてほしいものです. 世界観との整合性がとれるように,筋肉について設定を練るのは重要であるといえるでしょう.

PS: この記事を書き始めて2週間くらい立ってしまいましたが,その間にベンチプレスの記録が5kgくらい伸びました. 筋肉バンザイ!