さくらちっぷ

駆け出し同人サークルのブログです

ファンタジーとオーバーテクノロジー

なんらかです.

今回はオーバーテクノロジーについて書いてみたいと思います.


オーバーテクノロジーとは,その時代の技術水準を遥かに超えた技術を指します.

現代で言いますと,SF作品などで登場するレールガンやレーザービームですね.


説明はできるけど,実現できない(もしくは実現が著しく困難)な技術がオーバーテクノロジーに該当します.

そういう意味ですとガンダムの頭部バルカンの口径は60mmですから,完全にオーバーテクノロジーです.

一見地味な武装に見えますが,よくよく考えると亜空間に薬莢が詰まっていることがすぐにわかります.

まぁガンダムなどのロボットがオーバーテクノロジーだと言えばそれまでなのですが.


剣と魔法のファンタジー世界においては,こうしたオーバーテクノロジーは実に一般的なものと言えます.

なにせ奇跡を起こせるという前提があるのですから,技術の具体的な中身が知られていなくてもトンデモ技術を登場させることができるのです.

すなわち,電磁力がどうとか縮退だとか粒子がどうのこうのだとか,そういった面倒な議論をこねくり回さずに「魔力」などの超常的なエネルギーや概念で一元的に超技術を定義することができるということです.


簡単な例ですと,選ばれし者にだけ神々から貸与される聖剣は,オーバーテクノロジーの最たるものです.

どういう原理かはわかりませんが,その剣には高い霊格が宿り,魔を討ち滅ぼす効果があるのです.

SFではその仕組を考える必要がありますが,ファンタジーにおいては神の祝福という決まり文句で片がつきます.


このように,ファンタジー世界においてはオーバーテクノロジーを簡単に登場させることが出来てしまいます.

しかしオーバーテクノロジーの濫用は世界観の齟齬をいともたやすく引き起こします.

オーバーテクノロジーを登場させるということはいわば三国志に核爆弾を持ち込むようなもので,その存在はその世界にとってすると異常の塊です.

航空機のない時代に核爆弾だけを用意しても,戦争のリスクがただいたずらに高まるだけなのです.


もちろん,こうしたオーバーテクノロジーの存在は軍事大国の国力の裏付けや,宗教の権威の象徴ともなります.

聖職者にしか扱えないような真偽を判定する天秤などがあれば,教会はあっという間に裁判所になります.

かなり強固な宗教国家の誕生です.


ファンタジー世界のオーバーテクノロジーの多くは,ロストテクノロジーであることが多いです.

ロストテクノロジーとは,製法などが失われてしまった過去の技術のことです.


例えばテレポーターなどの転移装置があったとして,現代ではそれを実現できない場合,その技術はロストテクノロジーであり,オーバーテクノロジーです.

この場合,既存のテレポーターの使用権は競合の対象になります.

こうした技術を国家同士が常に奪いあうというのは,実にファンタジーな描写と言えます.


その他にもゲーム的な要素が強いものですと,人々に仕える神獣や召喚獣などもまたオーバーテクノロジーの一種です.

契約権と契約者の数や質は武力や国力に直結しますから,どの国も欲しがりますし,全力を上げて保護します.


オーバーテクノロジーの存在は,大国に囲まれて戦っているような小国を登場させる場合にとても便利です.

資源や技術を筆頭に国力で圧倒的に勝る大国を相手取るには,それに対抗できるだけの別の力が必要です.

そうした時に,オーバーテクノロジーが登場するのです.


例えば「一国を滅ぼせるだけの力を持った神竜に護られている国」となれば,他国は迂闊に手出しできません.

上手いこと懐柔するか,敵対国と同盟を組まれないように根回しをするかと言った消極的な行動を余儀なくされるでしょう.

逆に大国同士の目の上のたんこぶとなってしまえば,その国は挟撃されて大戦の主戦場になります.


この例の場合,神竜はオーバーテクノロジーです.

人の手にあり,それを制御する術があるのですから,生物の形をしていようが技術の枠に含まれます.


ファンタジーにおいては度々,勇者や魔王といった,世の常識の外に身を置く存在が現れます.

こうした存在をただの決戦兵器的なものとしてみるのか,それとも戦略的な兵器としてみるのかによってその扱いは大きく異なります.


将棋的に言えば,魔王を倒す勇者は王の頭にトドメを刺す金将ですが,大局から見れば暴力的な能力を持って暴れる飛車のような存在です.

どちらも目立つ活躍の場は用意されていますが,実際の能力や扱いには非常に大きな差があります.

しかし忘れてはいけないのは,どちらも王の駒であるということです.


すなわち勇者とは国家や人類種の所有物です.

神の技術によって生まれた存在なのですから,オーバーテクノロジーです.


強大な力を持った個を,再現の出来ないテクノロジーとして捉えることで,オーバーテクノロジーと同様の枠組みで扱うことができる.

これがファンタジーにおけるオーバーテクノロジーの一つのあり方なのかもしれません.