さくらちっぷ

駆け出し同人サークルのブログです

街道について その2

なんらかです.

街道語りの第二弾です.


前の記事では街道などの「道」がいかに重要だったのかを書きました.

次はファンタジーにおける街道について書きます.


やはりファンタジーにおいても,よほどなことがない限りは街道は文明において重要なパーツになりえます.


街道が発達しない世界では,航空技術が先に発達したか,地上がよほど生息に適さないかのどちらかでしょう.

ファイナルファンタジー12はこれらの典型例で,地表で活動するミミック菌により汎用金属が急速に腐ってしまうため,移動手段は空に向かって発達しています.

その他にも主要な道が過去に起こった災害や戦争の影響で死地になっている場合には,これを避けるために航空技術が発達するでしょう.

さらなる例外として,ワープ手段が普及している世界においては街道などもはや過去の遺物になっていることでしょう.


ゲーム媒体の作品では快適なプレイのためにしばしばワープ手段が用意されますが,プレイヤーにしか使えないように何かしらの理由付けがなされていることが多いと思います.

一部の人間しかワープを使えない世界なら,そういった職業が発達するか,その権益を持つ人間たちが支配階級になってしかるべきですからね.


前置きが長くなりましたが,やはり大部分の中世風ファンタジーでは街道+馬車が一般的な移動手段なのではないかと私は思います.

中世風を名乗るくらいですから,のどかな農耕地を背景に馬車に揺られながら街道を行き来するのは王道中の王道です.


中世では街道を領主が支配していたと書きましたが,ファンタジーにおいても大枠は同じでしょう.

しかし現実史と大きく異なる点として,魔物などのモンスターの存在が挙げられます.


村や都市は魔物が少ない地域に作られたり,結界などのそれなりな魔物対策がなされていることが多いと思います.

しかし街道はそれらの集落をつなぐ線であり,魔物の生息地の近くを通っていることもあるでしょう.


こうしたケースに対応するのが領主の仕事であると私は考えます.

私兵団を雇える商人や,単独巡礼が許されている教徒などは魔物と遭遇しても生き残れるでしょう.

しかし城や貴族に貢物を運ぶ領民たちはそうは行きません.

領主はこれら領民を守るため,何かしらの策を講じる必要があるわけです.


そのため街道警備に当たる衛兵は,現実史とは比較にならない規模で投入されていると思って良いでしょう.

関所や国境を見張るだけでなく,実際に街道を巡回するような兵も相当数いるはずです.


こうした設定を逆手にとれば,小遣い稼ぎのために商人をゆする衛兵などを登場させやすいかもしれません.

引退した冒険者やオフシーズンの傭兵団もまた,こうした任務を引き受けていることでしょう.


魔物対策を考えなくて良い設定にするのであれば,街道が魔物を寄せ付けにくいような仕組みを持っていると説明する必要があります.

例えば,魔物が人工物には近寄りたがらない,という設定があればわざと豪華な道を作ったりして対策できます.

光を嫌うのであれば,その世界の街道には街灯が立つことでしょう.


私の世界では,旧帝国によって主要な街道には魔物よけがなされているという設定です.

重要な街道は旧帝国が解体された後も各国がメンテナンスをしており,人の行き来はかなり活発になっています.

一方で新街道の登場などで廃れた旧街道は魔物が出没するようになり,日陰者が人の目から逃れるために利用しています.

こうした設定の旧街道は,追われる身分になったときに非常に便利です.


旧街道に現れた凶悪モンスターの討伐は,よほど問題にならないかぎり公の場では依頼されません.

そうしたときに,認可されていないような傭兵団や冒険者が助け舟になるのです.


検問を通せないような密輸品もまた,こういった道を通して運ばれます.

そこでさらに凶暴なモンスターと鉢合わせて……なんていうシチュエーションも,かなりファンタジーですね.


石炭やそれに変わる燃料が豊かな世界では,列車が街道を廃らせるかもしれません.

列車は上流階級が使うものであり,下流の出である冒険者たちは危険な街道を利用する,というのも味がありますね.

国が見向きもしなくなった街道は,きっと魔物や盗賊,傭兵くずれが相当数いることでしょう.


ともあれ,ファンタジーの街道には現実史にはなかったリスクが沢山存在します.

「馬車で5日の距離」なんていう表現の裏には,こうしたファンタジーの常識があるのです.