蘇生魔法
なんらかです.
今回はファンタジーにおける死について書きます.
ファンタジー世界を舞台にしたゲームでは,しばしば蘇生魔法などが登場します.
例えばドラゴンクエストでは体力が尽きると「しに」状態になります.
棺桶に入れられ,本当に死んでいるわけです.
生き返るためにはザオリクなどの蘇生呪文を唱えたり,教会でいきかえらせてもらったりするしかありません.
ドラゴンクエストではこの蘇生に対し,「教会で蘇生できるのは導かれし者とその仲間だけ」だったり,「致命傷を受けても仮死状態で生き残る」「肉体の傷を魔力で無理矢理ふさいで魂が肉体に還るチャンスを与える」といったり,いくつかの説明がなされています.
これらはゲーム的な都合で存在している「蘇生」を,なんとか齟齬を抑えて説明している例でしょう.
でなければメガンテで粉々になった人物を蘇生できるはずもありません.
ドラゴンクエストの世界であっても,実際にはパパスの様にぬわったらそこで人生終了なのが正しいのではないでしょうか.
「教会で蘇生できるのは導かれし者とその仲間だけ」という設定は,使命を与える上位種側の力で説明出来ているので,齟齬はあまりないですが.
ともかく,蘇生というのはとても設定を考えるのが面倒くさいものなのです.
現実世界では人は血を大量に流せば死にますし,心臓を潰されても死にます.
頭が吹き飛べば即死ですし,胴を切られても即死です.
さらに人は毒でも死にますし,寿命による死は避けようがありません.
そう考えると,ファンタジーであっても蘇生が可能なシチュエーションというものは非常に限られてくるはずです.
以下は心臓が一つしかない,普通の人間種について考えてみます.
普通に考えて,首が飛んだら蘇生は不可能です.
縫合する余裕もないでしょう.
そもそも胴や首,頭が切られた時点で蘇生は無理ですよね.
治療魔法によって腕や足程度はくっつくような世界でも,流石に脳天を叩き割られたら即死です.
特に真っ二つ系はほぼ確実にアウトだと考えて良いでしょう.
あとぺしゃんこもアウトです.
心臓が潰された場合も蘇生は難しいでしょう.
しかし魔法で第二の仮想心臓を作るなどすれば,もしかしたら延命・治療が可能かもしれません.
しかしできるできないにせよ,こうした治療ができる人材は限られていると言っても良いでしょう.
毒による死は,場合によっては蘇生ができそうです.
毒によって身体機能が維持できなくなり死んだとしても,毒を抜いて身体機能を再活性化するような魔法があれば蘇生が可能です.
ぶっちゃると,麻痺毒なんて食らったら基本的に死亡が待っています.
しかしファンタジーでは麻痺がポピュラーな状態異常だったりするわけですから,回復手段も文化として発展しているのでしょう.
寿命による死は,ファンタジーにおいても基本的に避けようがないと思います.
肉体側の延命が可能な世界観でも,大体の作品では「精神が死にたがっている」などの表現で蘇生が不可能であることが多いです.
そのほかにも,戦闘不能の考え方を変えてみるのも良いと思います.
蘇生手段は聖属性の神秘であると,だいたいの作品で相場は決まっています.
この例で行くと,魔物に倒された場合,死ぬのではなく身体が魔に汚染されてしまうので治療の前に浄化が必要,などとすれば教会で戦闘不能の治療ができるにも納得ができます.
いっそのこと,重症で戦闘不能に陥った,気絶したなど,マイルドにするのも手ですよね.
むしろ最近はそうした傾向が多いようにも思います.
蘇生手段は作品内の「死」の価値観を狂わせますから,シナリオ上非常に都合が悪いわけです.
「戦闘不能=死」とは出来ない以上,代替案が必要となります.
こうした場合,大体のゲームでは「死亡=ゲームオーバー」や「気絶」とするのです.
シナリオに強く絡まないキャラクターであれば,キャラクターロストしたりもしますが.
そうはいうもののやはりゲームですから,ゲームバランスとして蘇生手段にもバリエーションが求められるわけです.
成功率だとか,復帰後のHPだとかで,蘇生手段ごとに差を設定するのはRPGの基本ですよね.
エルミナージュ等,一部の作品は死体から灰になって,その後キャラクターロストするようなものもありますが……
私の世界では,蘇生は基本的に存在しません.
仮死状態からの治療は可能ですが,ぺしゃんこ系や真っ二つ系は即アウトです.
心臓破壊系は,場合によっては駆け込みセーフです.
どちらにせよ,魔法でできることは「蘇生」ではなく「致命傷の治療」であるということです.
人間の形を保てていないのであれば,基本的に治療は不可能です.
「死」について書くと,書くことが多すぎて全部は書ききれませんね.
「死」は人間だけでなく,モンスターや聖獣,時には神などの上位種にでさえ存在します.
MMORPGみたいに「モンスターは死んだら金と素材を落として霧になる」なんて冗談は,そうそうできることではないのです.