ファンタジーのお風呂
なんらかです.
今日はファンタジーのお風呂について書いていきたいと思います.
悲しいことに,中世ではお湯に浸かるという形式での入浴は一般的ではありませんでした.
基本的に,中世の入浴とは水浴びのことを指します.
貴族から庶民まで全員が温水で入浴していた国は,日本以外にはアイスランドぐらいしかなかったのです.
中世ヨーロッパでは,人々はそもそも清潔さに敏感ではありませんでした.
むしろ自己犠牲=信仰として不潔を好むケースが存在するほど,ヨーロッパは不潔だったのです.
これには入浴場を整備すると,男女のみだらな交わりが増えてしまうという問題が絡んでいました.
教会はこれへの対策として,男女の入浴時間に差を設けたり,入浴施設を閉鎖したりしました.
そんな文化なのですから,当然中世では入浴をする機会も多くありませんでした.
基本的には,朝に水浴び(それも洗顔だけ)をする程度です.
夜に入浴するという文化はありませんでした.
風呂桶は二人分の大きさをした,円形のたらいです.
しかし桶を用意するのは貴族ぐらいなもので,庶民が本格的に水浴びをする際は,川や湖に行く必要がありました.
また,宿では大きな風呂が用意されることもありました.
中世では,入浴するのは決まって朝です.
夜に入浴すると,追い剥ぎにあう可能性が高いからです.
当時,ろうそくは貴重品だったので,夜に明かりを灯すことは金持ちにしかできなかったのです.
夜に入浴する文化を持っていたのは,貴族と,そして娼館ぐらいのものでした.
娼館では事に及ぶ前に,まず入浴していたのです.
大衆向けのお風呂屋では娼婦の勧誘や斡旋が平然と行われていました.
教会が介入しているとは言っても,多くの入浴場はまだ混浴だったのです.
中世の臭いお風呂事情はここあたりで切り上げましょう.
なにせ,中世の入浴文化は古代ローマの時代よりも劣化しています.
ローマ人は入浴が大好きでした.(テルマエ・ロマエはそれを題材にしていますね)
実際に好きすぎてみんな堕落し,売春や飲酒が横行しました.
お風呂は男の物だったので,同性愛も盛んでした.
ローマ帝国崩壊後,ヨーロッパから入浴の文化が消え去ったのはこのためです.
蒸し風呂がポピュラーな地域もありました.
特に中東や中央アジアでは冷水の入浴ができないため,焼け石に水を書けてサウナを作り出していたのです.
では遅くなりましたが,ファンタジーのお風呂はどうなのでしょうか.
当然,魔法万能論なので温水での入浴は世界中で行われていることでしょう.
しかし現実史と大きく違うのは,シャワーの存在でしょうか.
中世では,シャワーというものはほとんど使われていませんでした.
ちなみにシャワーの原型は16世紀ごろにようやく出現したようです.
シャワーがまともに運用されだしたのは,実に20世紀に入ってからだったのです.
ファンタジー世界では,水を生み出す魔法や炎魔法を応用して,簡単にシャワーを生み出すことが可能でしょう.
むしろ浴槽に浸かる文化より,シャワーを浴びる文化の方が先に発達したかもしれません.
桶を作って水を貯めるよりも,高所に魔法で水源を作って水を浴びたほうが楽ですからね.
また身体を乾かす文化もすぐに発達したことでしょう.
中世ではタオルもリネン製ですから,吸水率がとても悪かったです.
そのため何度も布を絞って身体を拭きました.
乾ききらない分は,暖炉の前にいって乾かしました.
しかしファンタジー世界では,炎魔法と風魔法を応用すれば簡単に全身にドライヤーがかけられます.
シャワー文化の先行とあいまって,清潔好きな人が多かったことでしょう.
シャワーを浴びた後,魔法を唱えながら髪を降って乾かす.
とってもファンタジーですね.
ハンズフリーかつ一瞬で水が飛ぶのですから,手ぬぐいやタオルの文化は発達しないのかもしれません.
布は主に衣服や寝具,テーブルクロスなどに使われることでしょう.
その場合,ハンカチやタオルは皆,雑巾として扱われるのではないでしょうか.
いっその事,布が貴重な世界にしても良いかもしれません.
鉄よりも布の方が高価な世界であれば,より一層,魔法を使った日常生活が身近になることでしょう.