ファンタジーとリアリズム
最近では容赦なく,ファンタジーにリアリズムが介入してきます.
特に「ジャガイモ・トマト問題」など,文明形成に大きく関与する設定への議論は後を立ちません.
現代では,リアルなファンタジー世界が求められているのです.
ですがリアルなファンタジー世界とは一体何なのでしょうか?
その一つの答えとして,「現実世界の歴史の模倣」が挙げられます.
今私達が暮らしている街,住んでいる国,立っている大地,地球,そして宇宙.
これらは紛れもなく今そこに在るものです.
これらの「今」が作られるのにあたっては,途方もつかない歴史が存在していたことは明白です.
ビックバンが起きて,塵が集まって,恒星ができて,海ができて,生物ができて……
……そして人が生まれて,文明ができて,戦争が起きて,併合・分離を繰り返して……
そうやって「今」が生まれた,というのが現代で語られている歴史です.
人の手で語られる歴史というのは,その真偽の一切が不明です.
ビックバンが起きたというのは,あくまで宇宙開闢を説明するための論でしかありません.
新大陸を発見したのは,本当はコロンブスではなかったのかもしれません.
もしかしたらじゃがいもは,中世以前にヨーロッパ諸国に存在していたのかもしれません.
一部も違わない正確な歴史は,人の身で表現しきれるような代物ではありません.
無限の情報を有限である人が表現することは不可能だからです.(少なくとも現代の理論では)
だから,語られている歴史には,主観において自由に「もしかしたら論」を展開することができます.
しかしこんな「もしかしたら論」には特に意味はありません.
歴史を創作に結びつける上で重要なのは,「今」ある世界には確実に「過去」が存在しているという点です.
無限の情報をもった「今」が存在しているということは,無限の情報をもった「過去」が存在しているということに他なりません.
この無限の情報をもつ真実の歴史は「アカシック・レコード」と呼ばれていて,語り手に左右されず,そこに記されている情報は全て不変です.
この「過去」の存在こそが,今ファンタジーに求められている「リアル」なのではないかと思います.
すなわち,その異世界の「過去」を歴史として如実に表現できていれば,そのファンタジーはとてもリアルに感じることができます.
要は説得力の問題なのです.
「食糧難に貧していた国が,(そこらへんに生えていたかもわからない)じゃがいもを食べて強国になった」
「食糧難に貧していた国が,別の大陸からもたらされたじゃがいもを食べて穀物としての価値を知り,その知識を独占することで他国よりも強大な国になった」
後者の方が明らかに説得力が上です
歴史をきちんと描けていれば,それが正しかろうが間違っていようが説得力が増すのです.
ですがこれが地球史以外を舞台にした異世界になるとそう簡単には行きません.
実際に新しい異世界を作り出そうとすると,すべての事象に理由を設け,歴史を一から想像することは不可能のように思います.
……今日はこのあたりで終わります.
今度また掘り下げます.